2013年9月27日

まだ最高裁があるんだ!

シネマヴェーラ渋谷で「実録!犯罪列島2」という特集上映が行われている。事件・犯罪・裁判などを題材にした様々な社会派映画を集め、3週間に渡って上映するという内容。私が見たのは「青い山脈」でメガホンを取った今井 正監督の「真昼の暗黒(1956年公開)」。毎日映画コンクールやキネマ旬報など、数々の映画賞を総なめにした作品だ。


1951年、単独犯だった容疑者が警察の執拗な尋問に堪え切れず、知り合い4人を共犯者に仕立ててしまうという実在の冤罪事件、いわゆる「八海(やかい)事件」を担当した正木ひろし弁護士のベストセラー『裁判官~人の命は権力で奪えるものか』が原作。冤罪の恐ろしさ、国家権力の横暴をリアルに描き話題を集めた。「まだ最高裁があるんだ!!」というセリフは1956年の流行語となっている。

当時まだ裁判が継続中だった実際の事件を扱ったため、撮影段階から製作中止の指示が出され、 裁判所や警察からも圧力がかかったという。しかし、今井監督は断固としてそれに屈さず、結局、大手配給網から締め出され、 独立プロダクションでの製作・配給に踏み切ることとなった。見ごたえのある傑作映画である。