2013年8月6日

『風立ちぬ』を見て

宮崎 駿監督の映画「風立ちぬ」を見てきた。新宿バルト9のレイトショー、25時(午前1時)からの回。レイトショーには子供がいないのでゆっくりと鑑賞出来るのがいい。

まず一言申し上げておくが、今回の作品は完全な大人向けである。トトロやラピュタのように子供が見ても理解できるような内容ではない。レイトショーには学生と思しき人も多かったが、おそらくそんな彼らでさえ作品に入り込めたかどうかは定かではない。大正から昭和初期の時代背景を知っていてこそ共感できる純文学的な世界観なのだ。


気になったことを2点ほど。まずは音声が全編モノラルであるということ。作品の世界観を守りたかったのだろうが、通常のサラウンド音声での広がりがなく、中央付近からしか音が聞こえてこないので、物足りなさは否めない。音が悪いとか迫力不足という訳ではないものの、映像があれだけキレイに描かれているだけに何となくもったいない気がした。

何より気になったのはやはり主役の声だ。役者ではない庵野監督を起用したことにはやはり無理があったと言わざるを得ない。最近のジブリ作品は本職の声優ではなく、俳優・タレントをキャスティングしている。演出上、個人的にこのことに関しては支持するのだが、さすがに主役がずぶの素人というのは頂けない。後半の数シーンでははまっている部分もあったが、芝居をしていないので、どうしても主人公に気持ちを重ねられないのだ。

ただ、「青春映画」「恋愛映画」「反戦映画」として純粋に硬派な仕上がりになっているので、好みは分かれるだろうが、見る価値は充分にある映画だ。ジブリ作品の中で最も大人向けの作品であるということを気に留めてご覧頂きたい。